大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和34(あ)48 決定

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

弁護人樫田忠美の上告趣意第一点について。

必要的弁護事件である本件において、原審の発した弁護人選任の照会に対し、被

告人より回答がなかつたところ、原審が控訴趣意書提出の最終日経過後に至り始め

て、被告人のため弁護人を選任したのは、必ずしも当を得た措置であるとはいえな

い。しかし、同じく必要的弁護事件につき当裁判所は、控訴審が被告人から貧困を

理由に国選弁護人選任の請求があつたのにその選任を遅延し、控訴趣意書差出最終

日を経過した後に至り国選弁護人を選任した場合において、改めて同弁護入に対し

控訴趣意書を提出する機会を与える措置をとらなかつとしても、同弁護人において

みずから控訴趣意書を提出するため右最終日の変更方その他格別の請求をすること

なく公判期日に臨み、異議を止めず被告人提出の控訴趣意書に基いて弁論をなし、

そのまま結審となつたときは、右控訴審の措置を以つて、直ちに刑訴三六条に違反

し、憲法三七条三項後段により保障された被告人の権利の行使を妨げたとはいえな

い旨の判例(昭和三一年(あ)第三八四八号同三二年六月一九日大法廷判決、集一

一巻六号一六三七頁)を示している。この趣旨よりすれば、被告人が弁護人の国選

を請求しなかつた本件において、結審に至るまでの訴訟手続の経過は、記録に徴す

るも右判例に示されたところと全く異らない以上、所論の如く、法令に違反して弁

護権の行使を不能ならしめたものとは解し得られない。しかも、記録を調査するに、

被告人は第一審公判において本件公訴事実を自白していること明白であるばかりで

なく、結審に至る経過が前述の如くであるから、弁護入の国選につき所論の如き遅

延があつたとしても、原判決に影響がなく、又原判決を破棄しなければ著しく正義

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に反するものとは認められない。

論旨は、理由がない。

同第二点について。

論旨は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条所定の上告理

由に当らないから、採用し得ない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で

主文のとおり決定する。

昭和三四年五月一二日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 石 坂 修 一

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

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